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Formlabs史上最も精度の高い3Dプリント素材「Dental Model Resin」ができるまで


歯科技工室には、ある特定の用途ではなく幅広い用途に使えるツールがいくつかあります。プロ用の3Dプリンターはその中の一つです。プロ用の3Dプリンターが幅広くさまざまな用途に応用できるのは、用途に応じていくつもの素材が用意されているからです。素材は、何に使うかによって固有の特性が求められます。丈夫で長持ちすることが求められたり、手術のために生体適合性が必要だったり、見た目の問題から透明であることが好ましかったりという具合です。 新しい素材を使うだけで、今まで使っていた3Dプリンタで、より多様な歯科用製品を作り出すことができます。手作業や高価なCNC切削機に頼る必要は、もうありません。Formlabsは2016年の春に、初の生体適合性素材となるDental SGをリリースしました。現在は2017年末の発売に向けて、未発表のものも含め6種類の歯科用素材を開発しています。 これまで、歯科医師のお客様方から、歯科用模型のレジンが欲しいというご要望を多く頂戴してきました。クラウン・ブリッジの補綴では、クラウン(歯冠)もしくはブリッジを実際の患者の歯に取り付ける前に、患者の歯並びを高い精度で再現した作業模型を使い、適合を確認します。従来の石膏タイプの歯科用模型は、患者から採取したアナログな歯型に頼っており、また、作成には手間のかかる作業が必要でした。3Dスキャンでデジタル化することにより、ワークフローはシンプルになります。時間も短縮され、コスト削減にもつながります。 Form 2用に歯科用模型のレジンを開発することは、大変な困難を伴いました。クラウンブリッジ補綴物調整に使われる作業模型の作成は、歯科用途の中でも最も精度要求の厳しい部類に入ります。

 

最適な原料を求めて:歯科用模型の配合が決まるまで

配合を決めるプロセスの第一歩として、初期段階の調査・研究が行われました。 歯科用模型素材の開発リーダーを務めたFormlabsのレイチェル・デイビスは、このように振り返ります。「歯科技工士や歯科医からヒアリングを行い、歯科分野でどういった特性が重要視されるかを理解しました。従来の石膏モデルを一緒に観察し、どのように改良できるかを議論しました。その後は、開発サイクルの繰り返しです。つまり、新しい配合を作っては大量のプリントを行い、歯科医と歯科技工士からフィードバックを受けます。もらった意見をラボに持ち帰り、再び新しい配合を検討するという具合です。」

いくつかのパーツに分かれた従来の石膏模型と、FormlabsのDental Model Resinで3Dプリントされたクラウン模型。クラウン模型は着脱式のダイ(支台歯)が付いています。 クラウンブリッジ補綴物調整の作業模型では、重要な要件の一つに寸法の正確さが挙げられます。歯科医院や歯科技工所では、補綴物を歯に取り付ける前に、模型を使って歯列にフィットするかを確認します。ごく小さな歪みがあった場合でも、模型にうまくはまらなくなってしまいます。さらに悪いケースでは、患者への補綴中や補綴完了後に不整合が発覚することも考えられます。 このように非常に高い精度要求を満たすためには、最適なレジンの配合を探ることが極めて重要です。 フォトポリマー樹脂はさまざまな成分からできています。短いプラスチックの鎖(モノマーとオリゴマー)がコアを形成し、光重合開始剤が反応のトリガーとなり、いくつもの添加剤が混ざり合って色や力学的特性および透明度を決定します。 「精度を最大限に高める反応プロセスを探る必要がありましたが、許される誤差は非常に小さいものでした。光重合反応が早く進みすぎると、レーザーが造形物を照射した際、必要な輪郭部だけでなく広範囲のレジンが硬化してしまいます。逆に光重合反応が起きなかったり、エネルギーが小さすぎる場合には、レジンは液体のまま固まりません。」 私たちの目標は、歯科医療のプロたちが何十年にも渡って使い続けてきた石膏模型と同じ性能を持ったマテリアルを作り上げることでした。「強固かつ、ボロボロ崩れたりしない素材が必要でした。ユーザとなる歯科医や技工士たちは何度も模型を使った作業をして、力を加えることになるからです。若干の摩擦を持たせて、石膏と同じ感触にすることも求められました。」 基本的な配合が決まると、次は色と透明度について研究を重ねました。石膏模型の表面はマットで、ディテールの観察に向いています。私たちはレジンの色をやや暗めにし、透明度を調整した上でさらに仕上げのための添加剤を用いることにより、石膏よりもさらにディテールを豊かに表現することに成功しました。

歯科用模型のテストプリント。さまざまな色を調合してテストしました。 色を決めるだけの工程ですが、最終的に数百点ものプリントを試行錯誤しました。グレーのシミができたり、かすかにオレンジ色がかってしまったり、ピンクになったものもありました。医師にとって従来の石膏モデルと同じくらい自然に感じることのできる配合を実現するため、努力を続けました。「1ヶ月以上にわたって量産しては歯科技工室に持ち込み、フィードバックを得てきました。」

 

完璧なレシピへ:設定の最適化とテスト 配合が決まっただけではレジンの開発が終わったとは言えません。精度を最大限に高め、プリントを成功させるためには、設定の微調整が欠かせません。 3Dプリンタのスペックが、出力されるパーツの精度に単純に影響するというのは、よくある誤解です。造形物の品質は、解像度、積層ピッチ、レーザーのスポット径、ピクセルサイズなど、各種のスペックだけでは決まりません。Formlabsでは、光造形方式(SLA)の3Dプリンタ、ソフトウェア、そして素材を自社開発し、これらがすべて一体となって機能するように注意を払っています。プリンタが基礎となり、それに最適なレジンを調合し、そして一つひとつの素材ごとに設定値を研究します。こうして、精度と信頼性の高いプリントが可能になるのです。 一例として、パーツのサイズが違えば必要な精度も変わってきます。「設定の調整とは、小さなものから大きなものまでを適切に扱えるよう、パーツのサイズに合わせてカスタマイズするということです。」歯科用途では、主に小さなパーツや狭いマージンに使われますので、Dental Modelのレジンもそれに見合った精度が出せるよう開発されました。 「パーツをスキャンしているとき、出っ張っている箇所に比べると、凹んでいる部分の特徴を正確に捉えづらいことに気づきました。歯科用模型には割れ目や凹みがたくさんありますので、これは重要な発見でした。ソフトウェアに機能を追加し、レイヤーの描画方法を改善することで、凹みの部分を的確に表現できるようになりました。」 Dental Modelにおける私たちの目標は、プラットフォーム上に直接簡単にプリントできるようにすることでした。これによってプリント時間が短縮され、素材が節約でき、後処理の手間も削減できます。

歯科用モデルの底面はたいてい平たく、突起は全くありません。そのためほとんどのケースでは、サポート材は不要で、直接プラットフォーム上にプリントすることができます。そのため、プリント時間、素材、そして貴重な手間を削減することができます。 「パラメータを最適化することで、プラットフォームへの粘着度をなんとか調整することができました。造形物が毎回確実に接着しつつも、剥がすのが容易で、ノミを使わなくて良いようになっています。ノミだと造形物を傷つけてしまう恐れがありますので。」 満足のいく配合と設定が得られた段階で、信頼性試験が始まります。昼夜を問わず新しい素材でプリントをしてくれていた10箇所の歯科技工室に、それまでより大きなサンプルカートリッジを届けました。製品寿命と安定性のテストには、遠心分離機を使います。負荷をかけることで、カートリッジを40日間棚に放置した状態をシミュレートできます。さらにテストの一部として、取扱方法をあえて正しく守らない使い方も行いました。

 

精密性の評価 私たちは開発プロセスの半ばで、3Dプリントによるクラウンブリッジ補綴の作業模型について、精度の評価に着手しました。この評価はミカエル・シェーラー博士の協力を得ています。博士は、歯科医学の博士号と科学の修士号を持ち、ロマ・リンダ大学で臨床学の准教授を務めるほか、ネバダ大学ラスベガス校で臨床修練指導歯科医として活動しています。

6台のForm 2プリンタを使い、合計148個に及ぶパーツがプラットフォーム上に直接プリントされました。パーツはバリエーションに富んだダイとアーチからできています。これらを参考にすることで、全般的な強度について把握することが可能になりました。各パーツはプリント後にプラットフォームから取り外され、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄されます。二次硬化を経て、デスクトップスキャナで光学スキャンを行います。その後、各モデルをオリジナルの.STLファイルと比較します。

評価の結果から、50ミクロンと25ミクロンの設定でプリントしたものは、臨床的に見て精度の高い模型となっていることがはっきりとわかります。マージン部とアーチ模型全体の両方の精度が、私たちが前もって定義した臨床的関連目標値の範囲に収まっています。積層ピッチが25ミクロンの設定では目標値を大きく超える結果を出しており、50ミクロンでもクラウンブリッジ補綴の作業模型用としては十分な精度を保っています。

 

歯科用3Dプリンター formlabs Form2の性能をご体感いただくため、Dental Modelでのサンプル造形依頼も承っております。お問い合わせページより(新しいウィンドウで開きます)ご連絡ください。

是非この機会に性能をご体感ください。その他疑問点、ご質問ございましたらお気軽にこちらもお問い合わせページからご質問ください。十数種類の3Dプリンターを利用してきたサポートチームがお答えいたします。

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